サラチインタビューシリーズ第01回 
千葉県松戸市戸定歴史館館長補佐  齊藤洋一さん PART1
 
 

   

 

開館から最初の10年間は基礎固め、そこから先の10年間は協力していただける方々と力を合わせる時期。一緒にやらないと多勢に無勢ではダメですからね。最終的には、少しでも今の人達に役に立ててもらおうという、当たり前のとこに行き着きました。 

 


 

1回目のインタビューは20116月に松戸で行われた展覧会『戸定邸・日本画タイムスケイプ』でお世話になった、千葉県松戸市にある戸定歴史館から館長補佐の齊藤洋一にインタビューさせて頂きました。文化財で展覧会を行う事や齊藤さんの関わられてきたお仕事など、幅広くお話を聞かせていただきまいた。      (聞き手/四宮)

 

 

——まず初めに、サラチ分析の第一回展覧会「戸定邸・日本画タイムスケイプ」では大変お世話になりました。ありがとうございました。


「いえいえ、こちらこそ。」


——初めに齊藤さんにお伺いしておきたいのが、お立場がたくさんあって分かり辛いのですが、正確に斎藤さんのお立場を言うと、
どういった肩書きになるんでしょうか?

 
「はっはっは。
ず一番最初にくる肩書きは行政組織上では戸定歴史館館長補佐ですね。」


——
私たちは齊藤さんのことを学芸員として認識していたのですが‥。

 
「役職には2系統ありましてややこしいのですが、市役所には「補職」というものがありまして、辞令では「補職」として学芸員を命ずとなっています。今は学芸員でもあり、館長補佐でもある。正式に名乗る場合は館長補佐と名乗ります。仕事の内容としては学芸員としての仕事がメインです。」

 

 

 


——戸定邸に一番初めに関わられたのはいつ頃だったんでしょうか?

 
「え〜と、昭和63年ですね。もう24年くらい前になるのかな。

 
——就職という形で関わられたのが最初ですか?

 
「いえ、就職する前です。就職するのはもうちょっと後ですね。その頃はまだ学生でしたので、最初はアルバイトですね。」

 
——どういった関わり方だったんですか?

 
「最初の頃はまだ早稲田大学の学生でした。松戸市で今度新しい資料館を作るので、学芸員を募集しているので興味がある人はいるかい?という内容の電話が研究室にかかってきました。」

 
——それは乗り気で?

 
「美術館ではないので、どんな内容なのか話を聞いてみようという気持ちはありました。当時、自分がやっていた分野※1と距離があるので、自分に務まるかどうか、まあとにかく担当の人と会ってみましょうと、こういう流れが最初のきっかけです。」

 
——元々の研究対象は、どういったのものだったんですか?

 
「仏画ですね。」
※1『分野』齊藤さんは元々早稲田大学の大学院で仏画の研究をされていました

 
——戸定邸にお邪魔させていただくと、大学院生や
鄙里沙織さん※2など、いろいろな方が研究員として働かれていますが、昔から、そういった育成というか、研究者の方に機会を作ることにも力を入れられていたんですか?


※2鄙里沙織さん。松戸市出身・在住の美術家。
サラチインタビュー第四回にて鄙里さんのインタビューを予定して
います。

 

 


「基本的には戸定歴史館という名前の通り、大きな括りとしては歴史系の博物館ということになります。収蔵している徳川家伝来品には、文書などの歴史資料や写真、美術工芸品です。その調査研究のために、さまざまなジャンルの研究者に手伝ってもらい、さらに若手作家の方には創造的な博物館となるために力を借りています。」

 
——齊藤さんと言えばまず、
徳川慶喜の研究というのが思い浮かびますが、この業界では右に出るものはいないといった自負などはあるんでしょうか?

 
「そんな、自負があります!なんて言ったらすごい偉そうに聞こえちゃうよなぁ。(笑)まあ長年そういうことをやっていますし、徳川慶喜のひ孫さんにも協力していただいたりしていて、振り返ってみると彼の遺品を一番数多く見ているし、新発見となる慶喜の資料を紹介してきたということはあるんじゃないでしょうか。」

 
——研究者としての面だけではなく、戸定邸でのいろいろな撮影やドラマなどの歴史考証等々に関わられているのを見ていると、外向けに発信していくということも、意識的にされていることなんでしょうか?

 
「まず、戸定歴史館は徳川昭武※が建てた戸定邸の敷地の中にありますから、徳川昭武さんについての博物館なんです。ただ、彼は一般の人にはあまり知られていません。ですから、存在を知ってもらうということから始めなくちゃいけないと思いました。
もちろんそのためには,彼がどういう役割を果たしたのか、どういう人物なのか、あるいはどのような文化的な資料を残したのか、そういうことを調査した上で情報提供していかなければなりませんが、そういった時にマスコミの協力を得るというのは非常に大事なことなんですよね。
とにかくマスコミに取り上げてもらわないことには、多くの人に情報を届けらない。そういったことは最初の頃から、意識的にやっていましたね。

 


※3徳川昭武(1853-1910.徳
慶喜の異母弟、最後の水戸藩主。将軍名代として慶喜により1867年パリ万国博覧会に派遣される。英国訪問時には次期将軍の有力候補の来英と大きく報道された)

 
——具体的に分かりやすいお仕事というと、どういったものがあったんでしょうか?

 
NHKの日曜美術館』※4大河ドラマの『徳川慶喜』※5
『その時歴史が動いた』、『堂々日本史』」、『驚きももの木20世紀』、『トリビアの泉』あたりでしょうか。」



※4『日曜美術館』では徳川慶喜の描いた油絵の特集。
※5大河ドラマ『徳川慶喜では資料協力、
松戸市戸定歴史館として関わられています。
松戸市戸定歴史館のクレジットはこちらの映像で確認できます。

 


[HD]徳川慶喜OP


http://www.youtube.com/watch?v=jZ9IzgrDi4Q

 

「大河ドラマ『徳川慶喜』で言えば、台本を渡されて作家の田向正健さんや担当者の方から幕末の経験が少ないので、気づいたことがあったらなんでも教えてほしいという話でした。「この人、この時には死んでますよ。」とか、「ここはこうなっていますけど本当はこうですね。」とか、別に脚本をどうこうしようというつもりではなかったんですが、それを書いて送ったら非常に助かるという話になって、これはどうなんだ、あれはどうなんだと聞かれているうちに、何かすごく協力することになってしまいましたね。」

 
——もう脚本レベルで参加されてるんですね。(笑)

 
「脚本家さんにご参考までにと渡していました。変えろとか大それたことを言っているのではなくて、歴史の研究というものとドラマを書くというのはまったく別の領域だと思うんですが、田向さんはそれでも丹念に直されていたようです。凄い方でした。

 

 


——戸定邸はすごくイベントが多いと思うんですが。そういったものも齊藤さんが初めに企画されていたりするんですか

 
最初の頃は自分たちから積極的に情報発信していかないと誰も取り上げてくれない。誰も知らないという状態でした。それがちょっと変わってきたのが、平成10年の大河ドラマ『徳川慶喜』放映です。それを契機として、あまり研究されていない領域に突然需要が高まる訳ですよね。慶喜バブルみたいな。ずうっとそういう変わった研究をしているのは誰かという時に、私を含め数人しかいないというようなこともありました。
平成3年の開館から最初の10年間は基礎固め、そこから先の10年間は自分たちだけではなくて、松戸シティガイド※6さんのような協力していただける方々と力を合わせる時期。一緒にやらないと多勢に無勢ではダメですからね。共にできる方とやるという方向になりました。
その次の段階になってくると、今度はそういった活動をそもそも何故するのかと。いろんな形を経由して最終的には、少しでも今の人達に役に立ててもらおうという、当たり前のとこに行き着きました。そこに協力していただける方ということで、恐る恐るですが、芸術家の皆さんと新しいことを始めてみようかといった感じでしょうか。


6松戸シティガイド 自ら集まり、学び、活動しているボランティアガイド。活動拠点である戸定邸では年間1万人以上を案内している。その他、戸定邸隣接の茶室で年に数回茶店を開いて、来館者をもてなすなど多方面にわたって戸定歴史館の運営に協力している。

 

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戸定歴史館(戸定邸)

戸定邸(とじょうてい)(国指定重要文化財) 松戸の歴史を語るときに欠かせないのが明治17年に建設された戸定邸です。明治前期の上流住宅の姿を伝えていることから平成18年7月に国の重要文化財に指定され、芝生を使い、洋風を取り入れた庭園は昭和61年に県の名勝に指定されています。幕府最後の将軍徳川慶喜の弟、徳川昭武が後半生を過ごしました。昭和26年に市に寄贈され、平成3年に周囲の敷地2.3ヘクタールが「戸定が丘歴史公園」として整備され一般公開されました。徳川家の住まいが公開されているのは全国でもここだけです。隣接して昭武や慶喜の遺品を展示する戸定歴史館があります。戸定邸が、平成17年に「関東の富士見百景」に、平成20年11月には「ちば遺産100選」に選ばれました。また19年には戸定が丘歴史公園が「日本の歴史公園100選」に選ばれています。※ 平成21年10月16日(金) に戸定歴史館に天皇・皇后両陛下が行幸啓になりました。

 

 

サラチ分析第一回展覧会

vol.1『 戸定邸・日本画タイムスケイプ-帰還と出発-』
Japanese Painting Timescape ―Return and departure― in the Tojo Residence

場所 : 戸定邸[千葉県松戸市戸定歴史館]
 会期 : 2011年6月4日〜6月19日
 開場時間:9時30分−17時 (入場は16時30分まで)  
 休館日:月曜日(ただし、祝日・休日の場合はその次の平日)
 観覧料:入館料 一般 1 5 0 ( 1 2 0 )円 高校・大学生1 0 0 ( 8 0 )円 小・中学生無料
 歴史館・戸定邸共通入館料 一般 2 4 0 ( 2 0 0 )円 高校・大学生1 6 0 ( 1 2 0 )円 小・中学生 無料
( )内は2 0名以上の団体料金 駐車場:3ヶ所1 9台
 以下の方は無料で入館できます。
 松戸市内在住の身体障害者手帳、療育手帳の交付を受けている人とその介護者。
 松戸市内在住の70歳以上の人。
 2011年6月12日(日)は執行恒宏さんらによる演奏会を行いました。
 2011年6月13日(土)は午後1時より竹紙を使ったワークショプを行いました。

 主催 サラチ分析・松戸市戸定歴史館

 

 


 


    

 

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